「荒木 栄」 −年譜−

● 座り込む炭鉱電車のなかで、線路の上で、ビニール小屋で、団結小屋、国家権力に対して一歩もひかなかった炭鉱の男たちが、目をゴシゴシこすりながらうたいました。
 そこには父ちゃん、母ちゃんのつながりをのりこえ、闘いのなかで同志としての高いきづなを深め、闘争終結後の人権無視の生産再開のなかで創作された「地底のうた」のなかにある同志愛を生んでいったのだと思います。

● 三池の闘いのなかで、昼間は三池製作所に勤務し、ひけると大牟田センター合唱団と研究生の指導、現地指導部の仕事、それにうたごえ行動隊で夜明けまでピケ小屋、社宅、地域に入り、激励の公演、創作曲をみんなにかえし、統一と団結の思想を話し込んでがんばりました。

● 日曜日には、朝早くからやってくる全国のうたごえの仲間といっときの休みもなく、あの小さな身体で、孫悟空みたいに動きまわりました。だから、いつ、どこで、どんなにしてあんなに多くのうたを創作したのか、今もって私には不思議に思えてなりません。
とっぷ 荒木栄集 おけら歌集 荒木年譜 青年歌集
活躍年 年齢 荒木栄の軌跡
1924 大正13 00 ・10月15日、大牟田市の三池炭坑社宅で誕生。親子二代の炭坑マン。10人兄弟9番目
1937 昭和12 13 ・高等小学校卒業。三井三池製作所養成工を経て、機械組立職場で働く。鉱山機械組立工
1945 昭和20 21 ・5月、横須賀海軍工作学校に入隊後復員。その後、ビルマで戦病死の長兄の妻と結婚。
1946 昭和21 22 ・ハーモニカから始まり、バイオリンを独習。
1949 昭和24 25 ・大牟田混声合唱団、製作所混声合唱団に入る。宮沢賢治の童話劇の作曲などを始める。
落日のうたうたおうよおどろうよひとつ星のうたこの人を守れ啄木よ(仮題)
1950 昭和25 26 ・「炭坑ばやし」など5曲を作曲 ………レッド・パージや朝鮮戦争の時期
採炭のうた地底建設のうた炭鉱ばやし選炭情歌/不明1曲
1952 昭和27 28 ・青年団を主体として「うたごえ運動」を起こす。
1953 昭和28 29 ・三池113日間の闘争の中で、闘いの力となる「蛮声会」を結成。第1回「九州のうたごえ」に参加。
炭婦協行進曲
1954 昭和29 30 ・「映サうたをおぼえる会」等のみんなうたう会を組織。久留米医大で「胃」を手術し、退院後に設計課に移動。
おやすみ仲間たち大牟田うたう会のうた
1955 昭和30 31 ・「新さくら音頭」をもって「九州のうたごえ」に参加する。
春のうたごえ新さくら音頭ああお前さんお前さん心の中に
1956 昭和31 32 ・大牟田センター合唱団を結成する。 「燃やせ闘魂」など11曲を作曲。
そとは北風燃やせ闘魂星よおまえは希望の沖に仲間の顔
せんぷりせんじのうた沖縄を返せ/労働者はまだ/夜明けだ/不明2曲
1957 昭和32 33 ・全日自労全国大会を迎え、「憎しみの中から」「手」などを作曲。 はじめて「日本のうたごえ」に参加。
憎しみの中から
1958 昭和33 34 ・勤評(勤務評定)闘争の中で「子供を守る歌」を作曲。
人工衛星行進曲子供を守る歌
1959 昭和34 35 ・製作所の分離反対の43日間の闘争の中で、共産党に入党し、第1組合にとどまる。
 「大行進のうた」「どんと来い」などを持って、社宅公演を行う。
大行進のうたどんづまりのうたどんと来い
1960 昭和35 36 ・歴史的な「三池闘争」始まると共に、全国のうたごえの仲間、主婦や労働者の中で「おれたちの胸の火は」「三池の主婦の子守歌」など10数曲を作り、20次にわたる「うたごえ統一行動」の先頭に立って、広める。
月見草みんなでみんなで敵をうて三池の主婦の子守唄おれたちの胸の火は
みんなニコニコガンバロー団結おどり守れホッパー闘いの火を仲間の歌
花をおくろうひびかせろ
1961 昭和36 37 ・組合分裂後の厳しい状況の中で「心はいつも夜明けだ」「炭郎くんと炭子さん」などを作曲。社宅公演を数次に渡って行う。また、大牟田センター合唱団の研究生の教育、全九州の創作活動家の育成に努める。
宇部興産炭鉱労働者のうた三池で燃やした火を燃やせよろこびおい仲間たち
炭郎さんと炭子さん炭鉱社宅のおかみさんこぶし固めて心はいつも夜明けだ
黒潮の歌新島と板付と組曲「地底の歌」まわそう機械を
1962 昭和37 38 ・この年3月25日の「板付基地」包囲闘争の中で「この勝利ひびけとどろけ」などを作曲する一方、三池闘争を構成劇「不知火」にまとめ、九州各地を公演。
・5月、久留米医大病院にて手術。
・10月20日「うたごえ運動活動家第一席」として表彰される。
・10月26日、午後2時に逝去。
・11月25日、総評第21回臨時大会は、異例の個人表彰を行い、荒木栄の闘争と創造活動に高い評価をおくった。
ひざっこぞうの唄ふるさとアメリカ帝国主義を叩き出せ田植えうた
春まつり音頭春と夜明けと若者たち真っ赤な花はみんなの意気だ
この勝利ひびけとどろけこうず五月のうた平和と軍縮を//
おれたちは太陽我が母の歌
制作年不明 この道をゆく/沖縄かがやけ/筑紫野に春を/ミイ・ニシ/夢を紡ぐもの