橘中佐(F)
検定小学唱歌4(昭和4)

作詞
作曲
大和田建樹
納所弁次郎
陣地は高く 塁固く
敵勢激烈しき 首山堡(しゅざんぼう)
取らでは生きて 還らじと
  ■誓ひて進む 第二軍
   かくと見るより 退きし
敵は再び おし寄せて
打ち出す弾丸 飛雨(ひう)のもと
  ■斃(たお)るゝ屍は 數しらず
折しも宵の 雨晴れて
月は朧に さし昇る
空まで響く 鬨の聲
  ■天地も崩るる ばかりなり
10 中佐も傷を 受けながら
(なほ)塁頭に つっ立ちて
死ねや陛下の みためぞと
  ■叫びし聲の 勇ましさ
花さへ實さへ 香(かん)ばしき
橘中佐 名は周太
大隊率ゐて 進みしが
  ■見れば二條の 堀深し
11 言の葉いまだ 終らぬに
又も飛び來る 敵弾は
中佐を地上に 斃したり
  ■あはれ天こそ 無情なれ
兵よ恐るな 臆すなと
勵ます詞(ことば)の 下よりも
躍りて飛び入(い)る 堀の中
  ■いきほひ猛虎か 荒獅子か
12 遂に七つの 弾丸(たま)受けて
死せんとしつつ 残しおく
(ことば)に見ゆる 眞心は
  ■忠臣勇士の 世の鑑(かがみ)
守らば守れ 撃たば撃て
正義の敵を 拂ふべき
日本刀は 腰にあり
  ■大和心は 胸にあり
13 思へばめでたき 東宮の
御誕生日は 今日なるぞ
かかる記念の 吉日(きちにち)
  ■戦死するこそ 誉なれ
電光きらめく 劔太刀
抜く手鋭く 三名の
敵を見るまに 切りふせて
  ■猛虎のごとく 突き進む
14 この一言(いちごん)の 雄々しさは
七たび此世に 生まれんと
誓ひて死せし 軍神(いくさがみ)
  ■廣瀬中佐に 異ならず
将卒いかでか ためらはん
大隊長を 殺すなと
呼ばるる聲を 凱歌にて
  ■早くも乗取る 敵の塁
15 海には 廣瀬中佐あり
陸には 橘中佐あり
死しても死せぬ 英魂は
  ■皇國(みくに)を千代に 守るらん
風にひらめく 日章旗
大空たかく さし立てゝ
國の稜威(みいつ)を 示したる
  ■中佐の功(こう)は 小ならず

●同名異曲: 尋常小學4(大正01) 検定小学4(昭和04)

歌詞08/05/22/midi:09/12/12