笠置山(G)
中等唱歌/明治42年5月

作詞
作曲
池辺 義象
南  能衛


吹き巻く炎(ほのほ)に 雨風加(ふううくは)はり
ふせげどふせげど いまはやすべなし
木の丸殿(まるどの)は 見る見る焼けぬ
(たの)みし木戸は みなみなやれぬ
敵はなにもの かまくら賊徒(ぞくと)
  ■嗚呼(ああ) 笠置の山 大君おはす
  ■てだてもつきぬ この殿(との)

立蓋(たちおほ)ふさぎりに 道さへ見わかず
かしこき大君(おほきみ) みゆめのここちに
手に手を取りて 落ち行き給ふ
ゆくへもくらき 谷かげ木(こ)かげ
たのむあたりは 千早(ちはや)のあたり
  ■ああ 笠置山 いまはやおちぬ
  ■おほぎみいづこ かしこしや

頼みにたのみし 赤坂金剛(あかさかこんがう)
はかると知らずて おちつきたまへば
思ひもたがふ 六波羅館(ろくはらやかた)
時雨(しぐれ)も漏(も)るや 板屋(いたや)のおまし
ぬるる御袖(みそで)は ひる時あらず
  ■ああ 牢(らう)の御所(ごしょ) 軒うつ雨に
  ■涙もそひぬ ああかなし

波さへさかだつ 潮路(しほぢ)の八潮路(やしほぢ)
かぜをもいとはず 雨をもきらはず
みふねはいそぐ こじまの隠岐(おき)
おましはなりぬ 板屋のみとの
元弘(げんこう)二年 くれゆくはるべ
  ■ああ 蜑衣(あまぎぬ)の 重なるうらみ
  ■かこつもあはれ 世のさまや

山かぜ波かぜ あらびにあらびて
ゆくへもわかたず はてしもあらせず
みそらはくもり 日かげも見えず
(のぼ)らん月の かげだに知らず
笠置破れて 二年三年(ふたとせみとせ)
  ■ああ かりごもの みだるるみ世や
  ■おもへばうたて ああかなし


歌詞:08/03/13:midi:10/01/11-16/02/22/おけらの唱歌