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先ず前回の「ロシア民謡とクラシック音楽」の続きから |
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「タタールの虜(ロシアのテーマによる合唱用変奏曲)作品18の第2」(リムスキー:コルサコフ作曲)
珍しいギリシャ旋法の一種、ミクソリディア旋法の主題による作品で、ロシア人がタタールの圧制下に苦しんだ13〜15世紀の、「タタールの軛(くびき)」−と呼ばれる時代を描いたものである。かつて合唱団白樺定期演奏会で演奏されたことがある。 |
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A |
革命歌となった民謡「ドゥビーヌシカ」(仕事の歌)の管弦楽編曲(リムスキー:コルサコフ編曲)
ペテルブルク音楽院教授だった彼は、学生の反政府活動を支持したため、一時期学院から追放された。彼の民謡編曲は百数十曲に及ぶ。 |
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B |
交響詩「ステンカ・ラージン」作品13(グラズノーフ作曲)
リムスキー=コルサコフに学んだ作曲者の初期のヒット作。有名な民謡「ステンカ・ラージン」が出て来ると思いきや、テーマと変奏に使われているのは「ヴォルガの船曳き歌」である。何故か?農民暴動の指導者としてラージンが生きて活躍した時期、モスクワでの処刑以前には、まだその歌は無かった!! グラズノーフには「母なるヴォルガを下りて」の混声10部合唱編曲もある。 |
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C |
「12のロシア民謡」作品104(プロコフィエフ編曲)
1998年11月、日本のうたごえ50周年記念祭典(東京国際フォーラム大ホール)で演奏された民謡「ドゥーニュシカ」は、バレエ音楽「石の花」にも転用されている。 |
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D |
「交響曲第11番ト短調作品103”1905年”」(ショスタコーヴィチ作曲)
1905年はロシア革命と日露戦争の年。この曲は’99PMF(バシフィック・ミュージック・フェスティバル)コンサート(札幌)で演奏されNHKでテレビ放送された。多くの民謡、革命歌、自作合唱曲などが盛り込まれている。「聞けよ」「夜は暗い」「1月9日(“十の詩”より)」「同志は倒れぬ」「ワルシヤワ労目歌」−これらのうちの1部はエイゼンシュタイン監督の名作「戦艦ポチョムキン」の映画音楽としても使用されている。 |
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E |
「メリー・ウィドー」で有名なオーストリアの作曲家F・レハールの別の喜歌劇『ロシアの皇太子』で、ヒロインの踊り子が歌う美しいアリアがあるが、曲はロシア・ロマンス「くぐり戸」(「枝折戸」)そのものである。この曲は米映画「追想」(皇女アナスタシアをめぐるラプ・ロマンス)の中で、ウラジオストク出身の俳優ユール・ブリンナーがギターで弾き歌う。
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忘れられないラトビア、リトアニアでの思い出 |
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私は1964年5月、「訪ソ日本のうたごえ合唱団」のアコーデイオン伴奏者として約1か月間ソ連公演に参加した。公演プログラムのフィナーレはいつでも、どこでもムラジェリ作曲の「ロシア我が祖国』であった。ラトビア共和国でのこと−私の「ズドラーストヴィチェ!」に対して現地の通訳さんの言葉「ラトビア語ではラブディエンというのですよ」−その意昧の重さを今は痛いほど感じる。ソ連に強制併合されたバルト3国ではロシア製プラトークにさえ不快を感じる人がいるらしい。全ての国と民族の友好・平和を切に願いたい。
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1999年第12回東京国際映画祭で観た「オネーギン」で、「オヤ?…」 |
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マーサ・ファインズ監督がコンペティションで監督賞を受賞した「オネーギン」(英)は、プーシキン原作。チャイコフスキーの歌劇「エフゲニー・オネーギン」でお馴染みである。舞台は19世紀の前半だ。この音楽のメインに余りにも有名なワルツ「満州の丘に立ちて」が使われており、またエピソードにはドゥナェフスキー作曲「おおカリーナの花が咲く」(1950年)が使われていて、曲を知っている故に素直に楽しめない不幸を味わってしまった。
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ロシアはいま困難な時代のただ中にある。しかし千年の歴史は教えている |
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「タタールの軛」を脱し、ナポレオンやヒトラーの侵攻を撃ち破って、国を守り文化を育くんできたロシア人は自然環境に適応する能カにも優れて邊しい。
ロシア民謡を含めてロシアの文化・芸術の強大な伝統は不滅であり、これからの国の復活・再生に大きな役割をはたすことを信じて期待している。
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