あかがり【Em】
+無伴奏混声4部+



詞曲
編曲
日本古謡
信時 潔

S:
A:
S:

A:

あかがり 踏むな 後なる子
われも目はあり 先なる子
あかがり 踏むな 後なる子
われも目はあり 先なる子
われも目はあり 先なる子
あかがり 踏むな 後なる子
B:
T:
B:


T:


S:

A:
あかがり 踏むな 後なる子
われも目はあり 先なる子
あかがり 踏むな 後なる子
われも目はあり 先なる子
われも目はあり 目はあり
われも目はあり 先なる子
あかがり 踏むな 後なる子
あかがり 踏むなよ
踏むなよ あかがり 踏むな 後なる子
あかがり 踏むな
踏むなよ われも目はあり 先なる子
われも目はあり 目はあり
A:
S:
A:
S:
T:
B:
あかがり 踏むな 後なる子
………………………【踏むなよ】
踏むなよ………踏むなよ
……… 踏むなよ ………
後なる子 ……… 後なる子
……… 後なる子 ……… 後なる子




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新おけら歌集(10/11/30)青年歌集6 / 楽譜:ビーさん(11/02)

■あかがり 【冬の夜ばなし】■
尾崎喜八・
あかがり。つまりあかぎれ。
そのあかがりで思い出すのだ。

山みちにはちりちりの紙の造花のような、まんさくの黄色い花がひっそりと咲いていた。
雪解の水にしたたか濡れた朽ち葉の下から、堅い岩かどが靴底を噛んだ。
ちょうど峠の登りがぐるりと廻る山の鼻、朝日のあたる崖のふちにたたずんで、僕は最後の一瞥を昨夜の貧しい村へ送った。
谷が見え、橋が見え、分教場の校舎が見え、僕を泊めた小さな小さな旅人宿も見えた。
そしてその低い二階の障子の白さが、なぜか悲しく僕の心をしめつけた。

ああ、その時だった。
頭の上から朝の空気を押しやぶって、まるで何か天体が接近して来るように、学校へゆく少女の一段が歌を歌いながら下りて来た。

あかがり踏むな後なる子、
われも目はあり先なる子……

それは強く美しい輪唱風の合唱だった。
古代日本の豪毅で素朴な民族の感情が、早春三月の水のように、潺々と惻々と胸を打ってくる歌だった。さざなみの滋賀の都や青丹よし寧楽山かけて、あかぎれ切らし、たもとおった鄙の乙女ら。
遠くその血をうけついだ者が隊伍を組んで通過する。或る子は古いゴム靴を、或る子は下駄を、或る子はすり切れた草履だった。
その行進には若い動物のそれのような精気があった。そして一人一人が僕にぺこりと頭を下げた。僕も帽子の庇に手をかけて、崖を背に、道をゆずった。

少女の列はつむじ風のように過ぎ去った。やがて再び聞こえて来るあの合唱、麓をさしてしだいに遠く、ちぎれちぎれになるその歌ごえ、

あかがり踏むな……
……目はあり、目はあァりィ……
……先なる子ォ……
踏ゥむなよォ……