抜刀隊(A)
明治18年

作詞
作曲
外山正一
ルルー


吾は官軍我が敵は 天地容れざる朝敵ぞ
敵の大将たる者は 古今無双の英雄で
これに従うつわものは 共に慄悍(ひょうかん)決死の士
鬼神に恥じぬ勇あるも 天の許さぬ反逆を
起こせし者は昔より 栄えしためし有らざるぞ
  ■敵の亡ぶるそれ迄は 進めや進め諸共に
  ■玉散る剣(つるぎ)抜きつれて
  ■死する覚悟で進むべし
●日本最初の軍歌とされている。
皇国(みくに)の風(ふう)ともののふは その身を護る魂の
維新このかた廃れたる 日本刀(やまとがたな)の今更に
また世に出ずる身のほまれ 敵も味方も諸共に
(やいば)の下に死ぬべきぞ 大和魂あるものの
死すべき時は今なるぞ 人に後(おく)れて恥かくな
  ■敵の亡ぶるそれ迄は ……ref……

前を望めば剣なり 右も左もみな剣
剣の山に登らんは 未来のことと聞きつるに
この世において目(ま)のあたり 剣の山に登らんは
我が身のなせる罪業(ざいごう)を 滅ぼすために非(あら)ずして
賊を征伐するがため 剣の山もなんのその
  ■敵の亡ぶるそれ迄は ……ref……

剣の光ひらめくは 雲間に見ゆる稲妻か
四方(よも)に打ち出す砲声は 天にとどろく雷(いかずち)
敵の刃に伏す者や 弾に砕けて玉の緒の
絶えて果敢(はか)なく失(う)する身の 屍(かばね)は積みて山をなし
その血は流れて川をなす 死地に入るのも君のため
  ■敵の亡ぶるそれ迄は ……ref……

弾丸雨飛(うひ)の間にも 二つなき身を惜しまずに
進む我が身は野嵐に 吹かれて消ゆる白露の
果敢(はか)なき最期を遂ぐるとも 忠義のために死する身の
死して甲斐あるものなれば 死ぬるも更にうらみなし
われと思わん人たちは 一歩もあとへ引くなかれ
  ■敵の亡ぶるそれ迄は ……ref……

吾今ここに死なん身は 国のためなり君のため
捨つべきものは命なり  たとえ屍は朽ちるとも
忠義のために死する身の 名は芳しく後の世に
永く伝えて残るらん 武士と生まれし甲斐もなく
義のなき犬と言わるるな 卑怯者とな謗(そし)られそ
  ■敵の亡ぶるそれ迄は ……ref……


歌詞:10/07/02/midi:
■日本最初の軍歌。明治18年7月2日/日比谷鹿鳴館にて発表。
■「抜刀隊」とは、明治10年の西南の役において、警視庁巡査百余名で結成された精鋭部隊のこと。歌詞の中の「敵の大将」は西郷隆盛のこと。