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牡蠣の殻なる 牡蠣の身の
かくも涯(はて)なき 海にして
生きの命の 味気(あじき)なき
■その思いこそ 悲しけれ
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4 |
よしや清(すが)しき 夕づつの
光は浪の 穂に照りて
遠野が鳩の おもかげに
■似たりというも 何かせん
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2 |
身はこれ盲目(めしい) 巖かげに
ただ術(すべ)もなく 眠れども
ねざむるままに 大海(おおうみ)の
■潮の満干(みちひ) 覚ゆめり
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5 |
いたましきかな 海神(わだつみ)の
ふかき調べに 聞き恍(ほ)れて
夜もまた昼も わきがたく
■愁いとざす 殻の宿
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3 |
いかに朝明 朝じおの
色青みきて 溢るるも
黙し痛める 牡蠣の身の
■あまりに狭き 牡蠣の殻 |
6 |
さもあらばあれ 暴風(あらし)吹き
海の怒りの 猛(たけ)き陽に
殻も砕けと 牡蠣の身の
■請い祷(の)まぬやは思いわび |