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煙か浪か はた雲か
遥に見ゆる うす烟
海原遠く ながむれば
■嬉しやまさに 敵の艦
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6 |
砕けやうてや 敵の艦
残る艦 なくならんまで
胸をば楯に 身を的に
■進めやうての 聲高し |
2 |
あふるゝ勇氣 おさへつゝ
待ちにまちつる 敵の艦
砕きてうちて 黄海の
■藻屑となさん 時の間に
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7 |
飛びこし 敵の弾丸は
音凄まじく 砕けたり
今までありし 艦長の
■姿は見えず 成(なり)にけり |
3 |
とどろく砲(つゝ)の 音すごく
さかまく浪の 音荒く
海洋島の 沖つ邊に
■烈(はげ)しき戦 起りたり
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8 |
砕けやうての 號令は
士卒の耳に 残れども
今までたちし 艦長の
■姿は見えず 成にけり
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4 |
艦(ふね)の中にも 赤城艦
艦は小さく かよわきも
鐵よりかたき 心もて
■士卒は艦を 進むなり
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9 |
かよわき艦を 進めつゝ
まされる艦と 戦ひて
はえあるいくさに 艦長は
■榮ある死をば とげにけり
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5 |
弱きをならふ 敵艦は
左に右に 寄せくるを
續きて放つ 我砲に
■敵の甲板 人もなし |
10 |
其身はよしや 朽ちぬとも
譽はくちじ 千代八千代
赤城の艦の 名と共に
■赤き心ぞ うたはれん |