流浪の民【C】

作詞
作曲
作者不詳
Bogaev


(ひ)の凍るバイカルの ほとりを
追われて通る 虜囚の群れ
果てしなく広い荒原(こうげん)
我は見つめる
流浪の民のさだめ………
人の世に容(い)れられず 明日の日に終わる
  ■ふるさとに残した 愛しの人よ
  ■あぁ わたしを忘れてくれ
  ■ふたたび帰る日は 無い

青黝(あおぐろ)き シベリヤの河面を
さかのぼる船 どこを目指す
果てしなく広いその向こう
(しいた)げられし
流浪の民の ねぐら
いき先はそこだけだ 陽も凍る
  ■雪と氷だけの 果てしなき道
  ■あぁ恋人 遠い遠い
  ■手の届かぬ ところだ



新おけら歌集(10/10/10)12/28ロシアの詩 / 楽譜:ビーさん(10/12)

■エスキタァニェ(流浪)
 囚人作曲家、I・P・ボガェフは1903年にペトログラードでうまれた。現在のレニングラードである。彼は1947年の秋、ウルガルの中央病院で、ひどい労働に伴う栄養失調のため死んだ。入院する1ヵ月前まで、ボガェフはラーゲリ301号の文化部で私と一緒につとめていた。もう労働に適するからだではなくなっていたので、人事部は彼を私たちのところに.よこしたのだが・その頃はすでにはげしい・栄養失調特有の下痢を起こし歩行もやっとであった。
 反革命家として歩いた彼の道は結局死ぬまで囚人であったということであるが、その間監獄とラーゲリで彼は数多くの作曲をしたし、彼によって育られた、楽団もかなりある。この曲とつぎの「囚人讃歌」はボガェフの死ぬ数カ月前に書かれ、入院に際して私の手許に残していったものである。

●百瀬三郎
 元満日東京政治部、東條内閣国策研究会講師、戦後は作家。政治学者である櫻田淳氏の叔父。作詞家の島村喬と同一人物。山崎豊子氏と、剽窃盗作『華麗なる一族』に関して裁判になったことがある。
1960/01/28 百瀬三郎【島村喬】