望郷【Ab】

詞曲
訳詞
ロシア歌曲
島村 喬


紅い夕陽に 国を追われて
兄は東へ 妹は西へ
懐しの 思い出の国よ
  ■思い出の山よ 思い出の河よ

流れ流れて 国から国へと
放浪い歩き疲れ 既にいまは年を老えて
懐しの 思い出の国は
  ■遥か遠い空 遥か遠い道

きょうも異国の 巷に思い出す
兄と別れた 広いボルガのほとり
故郷よ 帰るすべのない
  ■思い出の谷よ 思い出の森よ


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新おけら歌集(10/10/10-12/25)ロシアの詩 / 楽譜:ビーさん(10/12)
■望郷
 ロシア人たちが赤と白とに分裂し以来、拭い切れない悲劇が斎らされた、という内容をうたっているのが、この・望郷」の歌詞だが、歌詞はたぷん革命後に、このようにつけ加えられたもので、革命以前から「望郷」はあった。ロシヤの民謡だとされているが、本当のところ、果してこれが民謡かどうかうたがわしい。
 1918年、というと革命の勃発した翌年だが、大勢の貴族たちが、もてるだけの財産を身につけてセバストオポリから軍鑑で国外へ亡命していく際、当時の白衛軍がこの「望郷」を波止場で演奏して送った、という記録が残っている。
 そのような悲劇を回想するだけでも、この「望郷」はエミグラントとなった白系ロシヤ人の感情を訴えるにふさわしい曲想をもっている。戦前、昭和12−3年頃、日本でも一時うたわれた。
1960/01/28 百瀬三郎【島村喬】