オデッサの港【Ab】
+映画オデッサ+

詞曲
訳詞
ロシア歌曲
島村 喬


風は海から吹く オデッサの港
こころこめたひとよ いまはどこにいる
あの路で別れた ひとはいまいずこ
あぁーー 灰色の雨の降る日に
いちど君をみた
  ■いまも雨は音もなく降る
  ■オデッサの港 戦いは遠い空

街の歩遣に散る 楡のわくら葉を
音もなくかぜが 運んでいくよ
佇でみつめる われの眼に涙-
あぁーー 風が海から吹いてくる
オデッサの街に
  ■戦いは君を連れいく
  ■我はただ一人 戦いは遠い空


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新おけら歌集(10/10/10-12/25)ロシアの詩 / 楽譜:ビーさん(10/12)
■オデッサの港
 映画「オデッサ」の中にひとりの男が出てきて、盛んにギターを弾きながらこの曲を歌うが、心憎いほど、その俳優はうまく歌っていた。
 オデッサの街は連日、独機で襲われ廃虚となっていく。男も女も.地下壕で絶望的な生活をつづけている。そして毎日灰色の雨が降りつづくのだ。空襲解除のサイレンが鳴ると一斉に外へとび出していって消火作業にかけ廻る。
 ここに一対の男女がいて空襲は二人を別々な世界へ閉じこめる。男は娘をふとある日、街角でみかけた。それ切りだ。マーシャというその娘は前線へ看護婦で出掛けていった。男はニヒリスチックにこの曲をうたい、やがて彼も独ソ戦線へと発っていく。
 ある年の秋、楡の葉の散る街の歩道にあるベンチでマーシャンは、ぽつねんとこの街から発っていった日を思い出している。もう過去の人となった、生死不明の彼を、しみじみと思い出している。そこへ通りかかったひとりの男がいた。彼も足をとめて、感概深げに楡の落葉をながめる。二人の視線が合った。
「あっ!マーシェンカ!!」 かってそこで離ればなれになったふたりは、ふたたびそこで邂逅し、結ばれた。という映画の筋を頭に描きながら、この曲をうたうと、味わいはひとしお深くなるはずである。
1960/01/28 百瀬三郎【島村喬】