いつかある日 【F】

作詞
作曲
訳詞
Roger Duplat
西前 四郎
西前 四郎

1. いつかある日 山で死んだら
 ■古い山の友よ 伝えてくれ
5. 友よ山に 小さなケルンを
 ■積んで墓にしてくれ
 ■ピッケル立てて

2. 母親には 安らかだったと
 ■男らしく死んだと父親には

6. 俺のケルン 美しいフェースに
 ■朝の日輝く 広いテラス

3. 伝えてくれ 愛しい妻に
 ■俺が帰らなくとも 生きてゆけと

7. 友に贈る 俺のハンマー
 ■ピトンの歌声 聞かせてくれ

4. 息子達に 俺の踏み跡が
 ■故郷の岩山に 残っていると




おけら歌集(03/02/02) / コロポcheck(03/07/21)楽譜:bunbun(08/03)

■ この歌の原詩はロジェ・デュプラという方の遺書(もしか或る日)だそうです。作曲者は関西登高会の西前四郎氏。20年くらい前、恩田善雄さんという方が西前さんと大日尾根を登った際、雪洞の中でうかがったと述べております。詳細は以下のurlを参考にしてください。1951年のナンダ・デヴィ遠征記のあとがきによるとデュプラは遠征中常に赤い手帳を持っており、それにいくつかの詩らしいものが書き付けてあったとのこと。「もしかある日」もそのうちの一つ。
 この歌は昭和58年頃の「女性自身」に紹介され有名になり、60年代の、うたごえ喫茶でよく歌われた曲。

http://byama.ld.infoseek.co.jp/siryou/mosikaaruhi/mosikamokuzi.htm
■デュプラ詩「モシカ或る日」(恩田善雄氏提供)
もしかある日、おれが山で死んだら、
山で結ばれたザイル仲間のお前にだ
この遺言を頼むのは。
そして オレの仲間のお前には
おれの ピッケルをとってくれ、
こいつが 恥辱の中で
朽ち果てるのは おれには 耐えられない。
お袋に会ってくれ、そして 言ってくれ、
おれはしあわせに死んだと、
おれの心は いつでも
お母さんのそばにいたから、
おれは 苦しくなんかなかったと。
何処か 美しい斜面へ 持って行ってくれ、
そして こいつのために
特別に 小さなケルンを つんでくれ、
そのてっぺんに さしこんで やってくれ。
おやじに 言ってくれ、おれは 男らしくやったと。
弟に言ってくれ、さあ 今こそ
お前に バトンを渡すぞと。
一般ルートから 遙か離れて
ひっそりと こいつを 立ててやってくれ、
そうすれば 氷河の上に
暁の光となって 勝利をうたい
岩稜のかなたを 落日のかがやきで
鮮血に 染めてくれるだろう。
女房におれの願いだと 言ってくれ、
おれが いなくても 生きるんだと 言ってくれ、
おれが お前なしで 山に生きてきたように。
そして ザイル仲間の お前には
これが おれの形見だぞ
おれの ハンマーを 手渡すぞ、
あの花崗岩の岩膚に
連打の木魂で おれの屍骸を
歓びに わななかせて やってくれ
息子たちへは こう言ってくれ、
大きくなったら 「エタンソン」の岩壁に
父親の苦闘の爪跡を 見つけてくれと。
岩壁に 山稜に 音高く 響かせろ
さあ 行ってくれ
おれは いつまでも お前と一緒に 登るのだ