極楽に行く方法/(山下嘉四郎)


 むかしむかし、ある長者の家に仏様を大変信仰するお婆さんがいました。
 毎月15日には近所のお婆さん達を誘って、お寺参りに行っていました。しかし、その長者も何かのはずみで段々と貧乏になり、その日の暮らしにも困るようになりました。近所のお婆さん達が誘っても一緒に寺参りに行けなくなったので、お婆さん達も誘いに行かなくなってしまいました。

 ある時、戸棚を片づけていたら一文のジェンコ(お金)を見つけました。「あー、これは天からの授かりものだじゃ。これで今度お寺にお参りに行くことができる。」そう思って、次の15日にお寺参りに行きました。
 しかし「この一文を無くしてしまえば、今度来ることが出来ない。」と思って、悪いこととは知りながら、その一文のジェンコに糸を付けて仏様を拝みました。そして、終わると糸を引いて、そっと投げ入れた一文の賽銭を持って帰りました。毎月、そうしていましたので、とうとう和尚さんの目に留まってしまいました。「あすこの婆、なんぼ悪いお婆だば。賽銭まいで、拝んで、糸引いて持って帰って、まんだ拝みに来て、あれだば困った婆だじゃ。」

 そこである時、和尚さんが「お婆さんは何のために、お参りに来るのですか?」と尋ねました。お婆さんが「和尚さん、我は極楽さ行きたいとので、毎月お参りしてるんでごす。」と言いました。和尚さんは「お婆さん、極楽さ行きてば、今すぐにでも行けるんですね。」と答えました。「あー、そういうもんだば、早ぐ行きでごす。」「んだが、へば、お婆さん、外さ出ろじゃ。」と、和尚さんはそう言って、小僧(こぼこ)に長い長い梯子を持ってこさせ、庭の木に掛けました。

 それは長くて天までも届くような梯子でした。和尚さんが「お婆さん、この梯子をずーっと登ってテッペンまで行ったら、我が「手離せー」って叫ぶ(さがぶ)がら、そのまま手を離せば、極楽さ行けるんだね。」と言いました。極楽へ行きたいお婆さんは、和尚さんの話を信じて、どこまでも梯子を登って行きました。そして、とうとうテッペンまでたどり着きました。下で和尚さんが「おーい、お婆さん、ギチッと目をつぶって手離せー」と叫びましたので、お婆さんはそのとおり手を離しました。

 それを、天空から仏様がご覧になっていました。和尚さんの話を信じているお婆さんを哀れに思い、助けるために雲の船を差し向けました。途中まで落ちてきたお婆さんを乗せて、雲の船は仏様のところに来ました。仏様は「生きていてこそ、極楽があるんだ。」と、お婆さんを諭しました。

 そうとは知らない和尚さんは、お婆さんが極楽へ行ったものだと思い、羨ましくなりました。「あの婆だきゃ、なんも念仏も知らなくても極楽さ行けるんだはんて(だから)、我だば当然行げるじゃ。」と思って、自分も梯子を登り始めました。けれども、少し登るとめまいがして、それ以上登れなくなりました。「ここらで良かろう。」と手を離しましたが、今度は極楽へ行く雲の船が現れません。和尚さんは、「ドシン!」という大きな地響きとともに落ちてきて、目玉がヒョロリと剥け、二度と歩けなくなるほどの大怪我をしましたとさ。

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