雨模様にカエルが鳴くわけ/(山下嘉四郎)


 むかしむかし。まだ動物(いぎもの)が何を食べて良いのか分からない時代に、神様は「食べる物を、教えるから、来い。」と命令を出しました。

 神様のおふれを聞いたもっけ(カエル)の王様が勇んで、神様のところへ行きました。途中、ヘビの王様がユルリユルリと歩いていたので「ヘビさん、急いで行かないと遅れてしまいますよ。」と声をかけました。ヘビは「カエルさん、我は腹が減ってなかなか急いで歩くことができねんだ。」と返事しました。カエルは「そんだば、我の太股(よろた)でも舐めって来い。」と、一言言い残して、神様のところへ急ぎました。

 神様は「カエルよカエルよ、おめだぢ(お前達)は、蛾やトンボ・チョウチョ・虫を食べて暮らすように。」と、おっしゃいましたので、カエルの王様はとても喜んで踊りをおどっていました。そこへヘビの王様がユルユルと来て「神様、私たちは何を食べたら良いでしょう。」と、伺いました。神様は「ヘビよ、おめだぢはカエルを食べて暮らすようにしなさい。」と言いました。

 これを聞いたカエルの王様はどってんして(ビックリして)「神様、何とかヘビが別のものを食べるようにしてください。」とお願いしました。すると神様は「カエルよ、おめがここに来る時、ヘビに「我の太股(よろた)でも舐めて来い」と言っただろう」とカエルに言いました。

 カエルの王様は「神様、あれは冗談に言った言葉で、本気で言った言葉ではありません。」と、一生懸命に言い訳をしました。しかし神様は「神様の世界では、冗談と言うことはありません。しゃべった言葉には責任がありますから、取り消すことは出来ません。」と言いました。

 カエルの王様は、自分達の棲んでいる沼に急いで帰って「ヘビが私たちを食べるように、神様が決めてしまったはんで(ので)、ヘビが来たら、この池から出ないように。」と言い付けました。それからカエルたちは非常にばがくさくて(悔しがって)、雨模様になれば声をそろえて「ヘビが来るから気を付けろ!」とケロケロ鳴くのだそうです。口は災いの元というはなしっこ。

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