じょじょ様眼ふぐれ/(奈良 まめ)


 むかしむかし、あるところに可愛い(めんこい)女の子がいました。両親と幸せに暮らしていましたが、幸せは長く続きませんでした。その子が3歳の時、母親が亡くなってしまいました。

 幼子(ちちぇわらしこ)をかかえて、困った父親は後妻(あどかが)を貰うことにしました。仕事が忙しいので、娘に寂しい思いをさせたくなかったのです。そんなわけで、新しい母親ができました。

 しばらくした後、父親は娘が台所(だいどご)で「じょじょ様眼(まなぐ)ふぐれ(つむれ)。じょじょ様眼(まなぐ)ふぐれ(つむれ)。」と叫んでいるのを聞きました。この時は気にも止めませんでしたが、魚を焼くたびにそう言うので、ある時、障子の隅(すまこ)からのぞいてみました。
 新しい母親が晩(ばげ)のおかずに魚を焼いていましたが、2匹しか焼いていません。そして、魚の間にはカエル(もっけ)が串差しになっていました。もっけは苦しいので、串に刺されて手足をバタバタさせています。それで「じょじょ様眼ふぐれ。じょじょ様眼ふぐれ。」と言っていたのでした。

 父親は驚き(どってんし)ました。それでは、娘は今までもっけを食べさせられていたのでしょうか。これでは娘を任せられないと思い、後妻(あどかが)を離縁する事にしました。

 後妻(あどかが)が自分の荷物をまとめ、荷馬車に積んで馬子がたづなを取って家を去ろうとした時、その娘が「たづな帰せや この馬子や また来る母(ままはは)も このごとく」と歌かけをしました。この継母を悪いと言って離縁しても、また後妻(あどかが)に入る人も同じ繰り返しだから、という意味です。

 父親も「なるほど、そうだ。」と思い直して、その場をおさめました。それからは後妻(あどかが)も改心して、仲良く暮らしましたとさ。

 トッツパレッコピー


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