我が家は橋のたもとの南無阿弥陀仏/(藤沢 ウヨ)


 むかしむかし、素晴らしい美男と美女が同じ宿屋に泊まりました。二人ともお互いに一目惚れしてしまいました。

 女が男に「おめ(お前)は、どごの人だ?」と聞くと、「ずーっと東の村だ。」と答え、「へば、兄弟は、何人だば?」と聞くと、「三男坊だ。」答えましたので、「家でも婿が欲しいばって、なかなかいないどごで・・・」と言うと、「我は、三男坊だはんて、おめ(あんた)さえ良ければ、婿になっても良い。」と言いました。

 そこで二人は結婚の約束をしましたが、女は親に相談もなく約束してしまったので心配になり、紙切れに「東西南北」と書き「東に×、西に○」をつけて、「我の家は、橋のたもとの南無阿弥陀仏。迎えに来て下さい。」と書き残して、家に帰ってしまいました。

 家に帰った女が、いくら待っても宿で一緒になろうと誓った男は訪ねて来ません。とうとう病気になってしまいました。しかし、恋煩いなので医者もお手上げです。とうとう親も心配の余り「誰でも良いから、娘の病気を治した人は婿にする。」と、立て札を出しましたので。家にはたくさんの人が押し掛けるようになりました。しかし、娘の病気は悪くなるばかりです。

 一方、男は書き置きを手に、まず東の方を探しましたが見つかりません。それで西の方へ探しに来た途中でした。疲れて木陰で休んでいると、お爺さんに会いました。男は考えあぐねていましたので書き置きをお爺さんに見せました。

 しばらくして、お爺さんが「ここから一里ほど行った橋のたもとに、数珠(じゅず)屋がある」はんて、行ってみへ。」と言いましたので、男はその数珠屋に行きました。見ると立て札があり、たいへんな人だかりです。訳を聞くと、どうやら宿屋の女の様です。男は列に並んで、順番が来たところで女に会いました。

 珠数屋の娘の病気が治ったことは、言うまでもありません。二人は再開を喜び、夫婦になって末永く暮らしましたとさ。

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