上の長者と下の長者/(藤沢 ウヨ)


 むかしむかし、あるところに上の長者と下の長者がいました。上の長者には子ども(わらし)が二人いましたが、下の長者には子どもがいません。

 ある時、凶作(けがじ)になり、みんな食べ物を探して歩き回りました。下の長者は貧乏な人々を救うため、米倉・味噌倉・金倉を全部開け、困った人々に配ったので、近郷近在からの人々で家の周りには、人垣が出来ました。

 けれども一ケ月もすると、さすがの長者の倉も底をついてしまいました。「どせば、良いのか。」と倉の前に来ますと、ピカピカと光る鳥が錠前に止まっていました。びっくりした長者は家に戻り、奥さんと一緒にもう一度見ると、優しい人の顔をした「金の鳥」でした。鳥は二人を見ると、サーっと飛んで行ってしまいました。何となく、長者が倉を開けてみますと、スッカラカンだったはずの米倉・味噌倉・金倉には、米・味噌・金がいっぱい入っていました。

 次の日、長者はさっそく立て札をたて、みんなに知らせました。そこへ目の見えないボサマがやってきました。長者は「ボサマは何でも分かる人だそうですが、どうして空になった倉の中が一杯になったか教えて下さい。」と頼みました。ボサマは「それは、神様からの授かりものだべ。おめ達は夫婦揃って心がけが良いはんて。とごろで、我はおめ達の子どもを神様がら預かって育てている。明日その子供達が来るはんて。」と言いました。

 はたして次の日、きれいな若者(あんさま)と娘(あねさま)が夫婦連れでやってきました。ボサマは「これが、おめ達の子だ。」と言いました。長者はとても喜んで二人の祝言を上げました。ボサマは「出雲さ帰らねばマイネ。」と行ってしまいました。

 下の長者は子どももできて幸せに暮らしましたが、上の長者の方は、米倉と味噌倉を開けたら土になっていましたし、金蔵には一銭も入っていませんでした。人を助ければ、助けられると言う話っこ。

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