御礼の繭玉/(海浦 義円)


 むかしむかし、あるところに心の優しい父親と幼い(ちっちぇ)娘が住んでいました。

 娘の母親は早くに亡くなりましたので、母親の代わりにご飯を作ったり、縫い物をしたりして父親の手助けをしておりました。父は村で一番の働き者でしたが、二人の暮らしは貧しいものでした。

 冬も間近なある日、父は幼い娘に正月の着物一枚買ってやれないのを不憫に思い、「今年こそ、おめに、着物の一枚もと思ったばって、貧乏だどごで古着にも手が出ない。我慢してけれ。」と言います。
 幼い娘は、「お父さんは、一生懸命に働いているんだはんて、我は着物なんかいらない。」と、父をねぎらいました。

 娘に慰められて、父はいつものように仏様に今日の無事を感謝しました。側で娘も手を合わせます。
「さあ、まま(ご飯)にするが。」そう言って、雑炊をすすろうとした時、「ごめん下さい。」と、声がしました。今頃、誰だろうと思って出てみると、一人の旅人が、今にも倒れそうな様子で、「腹へって死ぬえんた。何とかまま(ご飯)ごと恵んでけねが(下さい)。」と、お願いしました。

 心の優しい親子は、「さぁさぁ」と招き入れ、娘は自分の僅かな雑炊を差し出しました。すると父は「おめは、育ち盛りだから、我のままやれば良い。」と言います。「いいえ、お父さんは一日中働いているんだはんて。」と娘が言います。
 そこで、二人の雑炊を三人分にして、「わんつか(少し)で済みませんが、三人で仲良く食べるべし。」と、旅人も交えて、その夜(ばんげ)は楽しい夜となりました。

 次の日、旅人は「繭玉」を一つ御礼にくれました。
 その繭は、糸をとってもとっても無くならない繭玉でした。娘はそれで反物を織り、近所の貧しい人たちにも分けてあげ、親子揃って幸せに暮らしましたとさ。

 トッツパレッコピー


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