「魚龍石」の話コ


 むかしむかし、深浦のある問屋サ一人の船頭が泊まっていたんダド。

 その船頭が問屋の庭で藁打ち石ごと見つけで、その石ば2日もかがって磨いだんダド。磨き終わって、船頭が「水コ欲しナー」と喋ったドゴデ問屋の主人が鍋サ水コ入れで持って行ったんダド。船頭は、その藁打ち石バ丁寧に水の中サ入れだんダド。

 次の日、船頭ァ、 「この石コ欲しナァー」って喋ったんダド。そした藁打ち石だッキャ、どこサでもあって、珍しくも何とも無いドゴデ、問屋の主人は 「イゴス(どうぞ)イゴス」 って喋ったら、船頭ァ、懐(ふとごろ)がらジェンコ出して、「礼ダネ」って 喋ったんダド。

 主人はビックリして「いーゴス(いりません)いーゴス」って喋ったら、船頭ァ、「ンダガ、ヘバ(そうすれば)この石ば見スナガ(見なさい)。」ってした(喋った)ので、主人ァ鍋の中(なが)バよぐ見ただら、石の中に小さくて綺麗な魚コ3匹も泳いでいだんダド。

 船頭ァ、まじめな顔して「この石ァ、魚龍石っていう大変な宝物だんだ。水コなぐなればマイネばって、水あれば何年でも何十年でも生ぎているんダネ。もう2−3日このままにしておけば、中の魚コァ死んでまって、只の石ころになってしまうドゴであった。」

 船頭ァ、この世サ二つと無い宝物だドゴデ(なので)、長崎まで行って売るつもりであったんダド。「売れだら、なんぼがお礼しねばマイネな。」って、その石バ貰い受けだんダド。

 それがらしばらくして、その問屋サ包みコ届いだドゴデ、開けでみだっキャ、五拾両もの大金が入ってあたんダド。

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