討匪行(A)
昭和07年

作詞
作曲
八木沼丈夫
藤原 義江

どこまで続く泥濘(ぬかるみ)
三日二夜を食もなく
■雨降りしぶく鉄かぶと
■雨降りしぶく鉄かぶと

露冷えまさる草原に
朝立つ鳥も慌し
■賊が油断ぞひしと寄れ
■賊が油断ぞひしと寄れ

(いなな)く声も絶えはてて
倒れし馬のたてがみを
■かたみと今は別れ来ぬ
■かたみと今は別れ来ぬ

10 (おも)輝かしつわものが
賊殲滅の一念に
■焔と燃えて 迫る見よ
■焔と燃えて 迫る見よ

(ひづめ)の跡に乱れ咲く
秋草の花 雫(しずく)して
■虫が音細き日暮れ空
■虫が音細き日暮れ空

11 山こだまする砲(つつ)の音
忽ち響く鬨(とき)の声
■野の辺(べ)の草を紅に染む
■野の辺(べ)の草を紅に染む

既に煙草はなくなりぬ
頼むマッチも濡れはてぬ
■飢せまる夜の寒さかな
■飢せまる夜の寒さかな

12 賊馬もろとも倒れ伏し
焔は上がる山の家
■さし照れる日のうららけさ
■さし照れる日のうららけさ

さもあらばあれ日の本の
吾はつわものかねてより
■草むす屍 悔ゆるなし
■草むす屍 悔ゆるなし

13 仰ぐ御稜威(みいづ)の旗の下
幾山越えて今日の日に
■会う喜びを語り草
■会う喜びを語り草

ああ東(ひんがし)の空遠く
雨雲ゆりてとどろくは
■わが友軍の飛行機ぞ
■わが友軍の飛行機ぞ

14 敵にはあれど遺骸(なきがら)
花を手向けてねんごろに
■興安嶺(こうあん)よいざさらば
■興安嶺よいぎさらば

通信筒よ乾パンよ
声も詰まりて仰ぐ眼に
■溢るるものは 涙のみ
■溢るるものは 涙のみ

15 亜細亜に国す吾日本
王師一度(ひとたび)ゆくところ
■満蒙の闇晴れ渡る
■満蒙の闇晴れ渡る

今日山峡(やまかい)の朝ぼらけ
細くかすけく立つ煙
■賊馬は草を食(は)むが見ゆ
■賊馬は草を食(は)むが見ゆ


歌詞:10/07/02/midi: