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遼陽城頭夜は闌けて
有明月の影すごく
霧立ちこむる高梁の
中なる塹壕声絶えて
目醒め勝ちなる敵兵の
■胆驚かす秋の風
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斯くと覚りし敵塁の
射注ぐ弾の烈しくて
先鋒数多斃るれば
隊長怒髮天を衝き
「予備隊続け」と太刀を振り
■獅子奮迅と馳せ登る
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わが精鋭の三軍を
邀撃せん健気にも
思い定めて敵将が
集めし兵は二十万
防禦至らぬ隅もなく
■決戦すとぞ聞えたる
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剣戟摩して鉄火散り
敵の一線まず敗る
隊長咆吼躍進し
卒先塹壕飛び越えて
閃電敵に切り込めば
■続く決死の数百名
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時は八月末つ方
わが籌略は定まりて
総攻撃の命下り
三軍の意気天を衝く
敗残の将いかでかは
■正義に敵する勇あらん
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敵頑強に防ぎしも
遂に堡塁を奪ひとり
万歳声裡日の御旗
朝日に高くひるがへし
刃を拭ふ暇もなく
■彼れ逆襲の鬨の声
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「敵の陣地の中堅ぞ
まず首山堡を乗っ取れ」と
三十日の夜深く
前進命令忽ちに
下る三十四連隊
■橘大隊一線に
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十字の砲火雨のごと
よるべき地物更になき
この山上に篠つけば
一瞬変転ああ悲惨
伏屍累々山を被ひ
■鮮血漾々壕に満つ
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漲る水を千仭の
谷に決する勢ひか
巌を砕く狂瀾の
躍るに似たる大隊は
彩雲たなびく明けの空
■敵塁近く攻め寄せぬ |
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折しも喉を打ちぬかれ
倒れし少尉川村を
隊長躬ら提げて
壕の小蔭に繃帯し
再び向ふ修羅の道
■ああ神なるか鬼なるか |