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白雪(しらゆき)深く降り積もる
八甲田山の麓原(ふもとばら)
吹くや喇叭(らっぱ)の声までも
凍るばかりの朝風を
物ともせずに雄々しくも
■進み出でたる一大隊
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6 |
身を切るばかり寒ければ
またも露営と定めしが
薪(たきぎ)の無きを如何にせん
食のあらぬを如何にせん
背嚢(はいのう)銃身焚きつれど
■そもまた尽きしを如何にせん
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2 |
田茂木野(たもぎの)村を後にして
踏み分け上(のぼ)る八重の坂
雪はますます深うして
橇(そり)も動かぬ夕まぐれ
せんなくそこに露営せり
■人は垂氷(つらら)の枕して
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7 |
雪のこの夜の更けゆきて
寒さはいよいよまさりたり
凍え凍えて手の指の
見る見る落ちし者もあり
神いまさぬかあなあわれ
■命迫れり刻(とき)の間に
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3 |
明くるを待ちてまた更に
前へ前へと進みしが
み空のけしき物すごく
たちまち日影かき暗し
行くも帰るも白雪の
■果ては道さえ失いぬ
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8 |
居ながら死なんそれよりは
いずこへなりと行き見んと
山口少佐を初めとし
二百余人の兵(つわもの)が
別れ別れに散り散りに
■たどり行きけり雪の道
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4 |
雪降らば降れ我々の
勇気をここに試しみん
風吹かば吹けさりとても
行く所まで行かでやは
さは言え今は道もなし
■あわれ何処ぞ田代村
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9 |
烏拉爾(ウラル)の山の朝吹雪
吹かれて死ぬるものならば
西伯利亜(シベリア)原の夜の雪
埋もれて死ぬるものならば
笑み含みてもあるべきに
■ああ哀れなり決死隊
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5 |
君のためには鬼神(おにがみ)も
取りひしぐべき丈夫(ますらお)も
国のためには火水(ひみず)にも
入らば入るべき武士(もののふ)も
今日の寒さは如何にせん
■零度を下る十八度 |
10 |
ここの谷間に岩陰に
はかなく倒れしその人を
問い弔えばなまぐさき
風徒(いたずら)に吹き荒れて
うらみは深し白雪の
■八甲田山の麓原(ふもとばら) |