豊島の戦(A)
大捷軍歌・初/編明治27年

作詞
作曲
池辺 義象
納所弁次郎

(とり)の林に風立ちて
往き来の雲の脚はやし
「吉野」「浪速」「秋津洲」
探る牙山(がざん)の道すがら
七月二十有五日
暁深く立つ霧の
(ほの)かに見ゆる敵艦は
■名に負う「済遠(さいえん)
■「広乙(こうおつ)」号

たちまち見ゆる二艘(そう)の船
牙山をさして急ぐなり
勝ちに乗りたる我が艦(ふね)
進み進みて取り巻けば
白旗高く差し立てて
まずこそ降れ「操江(そうこう)」号
撃ち出す我が砲(つつ)一発に
■「高陞(こうしょう)」号は沈めたり
彼より撃ち出す弾丸に
怒るは人と神のみか
波さえ荒ぶる豊島(ほうとう)
我が軍いかでか躇(ためら)わん
互いに戦う程もなく
逃ぐるやいずこ彼の二艦
追えども追えども散り散りに
■行方も知れずなりにけり
折りしも波風おさまりて
清き喇叭の声おこり
東の空を仰ぎつつ
世界を動かす勝鬨(かちどき)
天皇陛下万万歳
日本海軍万万歳
この勇ましき勝鬨ぞ
■征清軍のはじめなる


歌詞:10/07/02/midi:
■「鶏の林」とは、かつて朝鮮のことを「鶏林八道」と称したことから。歌詞は当初下のようなものであったが、後に訂正された。
■訂正前:第2節1行目『打ち出す無礼の』、6行目『逃ぐるか卑怯の』、8行目『のがれ行きしぞあわれなる』、第3節5行目『あわれや白旗高く立て』