ひなかざり(D)
新尋常小学2/昭07


作詞
作曲
作者不詳


ももの せっくは うれしいな
赤い もうせん ひまうせん(緋毛氈)
ぼんぼり(雪洞) つけて まく(幕) ひいて
 ■めびな をびなを かざりませう

たんす ながもち はさみばこ(筴箱)
金の まきゑ(蒔絵)の ごしょ車
五人ばやしも にぎやかに
 ■ももの せっくは うれしいな


歌詞:10/05/28/midi:10/06/14-16/02/08/おけらの唱歌

+歌曲解説「ひなかざり」+
■教材観
 この歌曲は、年中行事に因み、尋常小學國語讀本巻四から取材して作成せるものである。男兒の爲には五月節句に武者人形を飾り、女兒の爲には三月の節句に内裡雛を飾り、種々の調度を陳べてお祝ひをする。美しい年中行事の一つとして、今でも盛んに行われて居り、子供にも最も親み深い年中行事の一つであることは言ふ迄もない。
 歌詞は、七五調の詩型に則り、四句二節から成って居る。調度の名に稍々難解の語があるけれども、實物と聯絡して教へれば大體解し得るであろう。稍々羅列的な嫌ひはあるけれども、題材の性質上止むを得ないであらう。
 曲譜は、ニ長調四分の四拍子、普通の節奏を用ひ十六小節の通作曲である。旋律の流れが流暢に進行し、その感じもひなかざりに相応應した優しい氣分が溢れて居ると思ふ。

■教授要旨
 この歌曲に依り、四分の四拍子曲の歌ひ方、及び附點二分音符の三拍を歌ふ拍子を知らせる。その内容からは、雛飾りの美しい場面を展開して優美な感情を淘汰する。

■歌曲解説
 桃の節句は、陰暦三月三日即ち上已の節句と言ひ、桃の花の咲く頃であるから桃の節句と云ふ。
 ぼんぼりは、紙張のおほひある手燭。はさみばこは、衣類や用具等を納れて棒を通して肩にする箱。ごしょ車は、屋形造りの牛車を言ふ。五人囃子は、笛、太鼓、小鼓、大鼓籐の五人の囃子方を模した人形。
 三月節句は大變嬉しいことである。棚には赤いまうせんを敷き、ぼんぼりをつけて幕を引き廻して、女雛男雛を飾りませう。
 その雛の前には、箪笥や長持や筴箱や、金の巻繪をした五所車や五人囃子の人形も飾りませう。桃の節句は實に嬉しいことである。
 第一二小節に跨る嬰ヘ音からロ音に至る四度音程を正確に歌ふ。第六七小節に跨るイ音からホ音に下行する場合にもホ音を正確に歌ふ。第十小節のロ音からニ音に上行する場合にも、短三度の關係を正しく保って歌ふ。
 各段二小節目毎の呼吸符を正確にすること。但し呼吸符の前の四分音符は餘りみじかくならぬよう注意する。
 各段末の附點二分音符は三拍を正しく歌ひ、次の一拍を正しく休止する。この處、子供は二拍半位で歌ひ切り、先を急いで歌ひ出す傾向があるから特に注意を要する。
 曲想は、優美に歌ふべく、速度は、のんびりと歌ふ。斯かる歌曲の發想は總じて強く歌ってはならぬ。