薩摩守(Em)
新訂高等小學唱歌(第一學年)/昭和10年


作詞
作曲
作者不詳


榮華の春も 移(うつ)ろへば
雲 北嶺に むらがりて
六波羅の夢 破れよと
  ■荒(すざ)ぶは 木曾の青嵐(あをあらし)

雲井の空と 分かれては
末 八重潮の 波枕
さだめの果(はて)を 行くわれと
  ■悟れどかなし 歌の道

野山に屍(かばね) さらす身の
師の御情(みなさけ)を 蒙(こうむ)りて
一首を集(しふ)に とどめんと
  ■たたくもあはれ 夜半の月

かたみを遺(のこ)す 武士(もののふ)
名は千載の 言の葉に
昔ながらの 香を留(と)めて
  ■誉もゆかし 山ざくら


■薩摩守とは清盛の末弟の忠度のこと。忠度は、優れた武将であると同時に優れた歌人でもあった。木曽義仲の来襲によって都から落ちのびるが、わずかな手勢で危険を冒して京へ舞い戻る。その理由は、歌の師である俊成に会い、中断されていた勅撰和歌集に自分の歌を入れて貰うためである。
 その歌道にかける執念の激しさに、俊成も動かされ、必ず歌集に採録することを約束する。忠度は安心して死地に赴く。平家が滅びて後、千載和歌集が編まれることになり、俊成は約束どおり、忠度の歌を入れようとするが、罪人の歌を実名で入れるわけにはいかず、「詠み人知らず」の歌として採用することで、忠度との約束を果たす。
歌詞:08/12/21/midi:09/05/05/おけらの唱歌