雪夜の斥候(F)
検定小學唱歌5(昭和04年)

作詞
作曲
佐々木信綱
納所弁次郎

天の川浪 荒れたちて
音なき瀧や 落ちくらん
林も森も 野も山も
皆白妙に なりはてて
降りしく深雪 をやみになく
■更行く夜半の 風つよし

もえたつ彼の 心には
寒さもあらず わびしさも
御國と君を 思ひつゝ
つとめつくすと 急ぐなり
急ぐ前途(ゆくて)の 森陰に
■はげしき響 起りたり

身を切る如き 眞夜風(さよかぜ)
烈(はげ)しき吹雪 をかしつ
敵のありかを さぐるべく
命ぜられたる 斥候の
尊き職分(つとめ)つくさむと
■進む一人の 兵士あり

手に持つ銃(つゝ)を取り上げて
木立の奥を うかがひぬ
森には敵の あらずして
すさまじかりし かの音は
繁れる村竹 下折れて
■しづるる雪の 音なりき

折々出(いだ)す 我息は
氷りてひげの 色白く
衣はうすし 風荒らし
耳も鼻も 手も足も
きれんばかりに 寒けれど
■勇める胸は もゆるなり
打笑みつつも 勇士(ますらを)
彼處(かしこ)に此處に 見めぐらし
又もゆくてを さぐらむと
道なき道を ふみわけぬ
吹雪の風は 吹そひて
■東の空は 猶(なほ)くらし


歌詞:09/07/10/midi:09/11/28