1 |
あらし寒く 雪白き
春の野の土の上に
出で來る
力づよの水仙に
吹かばふけ降らばふれ
■花ははや出でたれり
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5 |
花はこゝに おもへらく
土は今 雪の底に
なお固し
寸にも足らぬ葉の色も
黄ばめるをいかにせん
■伸びざるをいかにせん
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2 |
土の下の 寝床にて
夢醒ます 花の
耳に 聞こえくる
水のひゞき春風の
さゞめごとなほもまた
■春雨のたゝく聲
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6 |
我はあまた 力なし
されどたゞあたふ限り
盡(つく)し見ん
もし我顔もたげずに
いつまでもやすらはゞ
■春の來る時あらじ
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3 |
時は今ぞ いざ行かん
たゆたはぬ 花は
心さだめたり
かたく氷る地(つち)の上
やはらかき芽を出して
■世をながめ渡したり
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7 |
夜に晝に すこしづゝ
榮ゆく 葉の中より
あらはれし
黄金の花 その色香
ゆくすゑの春かけて
■咲き誇る愛らしさ
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4 |
雪は白く 身をかこみ
天つ日はなほかくれて
雲近し
こけぬ氷ねむる木々
淋しげに眺めたる
■此花のあはれさよ |
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