1月 |
あけゆく空の 初霞
うす紫に たなびきて
のぼる朝日の のどけさは
■春の光に なりにけり |
7月 |
蓮の浮葉に 玉見えて
すずしく霽るゝ 夕立の
そらを色どる 虹の色
■神のかけたる 反橋(そりはし)か |
2月 |
窓の日影の あたゝかに
梅のつぼみの ふくらみて
鶯きなく をりしもぞ
■野山もなべて かをるなり |
8月 |
きよき渚に 汐あびて
夏の盛(さかり)も わすれけり
磯の松風 波の音
■よるひる盡きぬ 友として |
3月 |
垣根ににほふ 桃の花
南はあかく 北白し
折りておくらん 一枝(ひとえだ)を
■初雛まつり する家に |
9月 |
雲はあらしに 拂はれて
くま(隈)なくす(澄)める 秋の月
おもへば今日は 十五夜の
■祭やすらん 家ごとに |
4月 |
汐干にいでて 貝ほれば
あさり蛤 かずおほし
きのふも籠に 満ちにけり
■けふまたゆかん 父上と |
10月 |
野分の風の 音すごく
散りしもみぢ葉 ふみわけて
秋の山路を 朝くれば
■里の板橋 霜しろし |
5月 |
茶摘の歌の はなやかに
はやくも夏は 來りけり
いちごとりつゝ 遊びたる
■故郷(こきょう)の山ぞおもはるゝ |
11月 |
月かげ寒く 風さえて
半(なかば)こほれる 池の面に
なにもとむらん 一(ひと)むれの
■雁(かりがね)なきて 下りにけり |
6月 |
門田(かどた)のおもに
賤(しづ)の女(め)が
うゑし早苗の 葉末より
夜はみだれて 飛ぶ螢
■あつめてゆかん わが袖に |
12月 |
ひらひら おつる 白雪に
庭のかれ木も 花をつけ
賤がわら屋も うづもれて
■玉のうてなと なりにけり |