夕宴【Dm】

詞曲
訳詞
ドナエフスキー
島村 喬


夕べの うたげで
君に抱かれながら踊る ワルツは愉し
汗ばむうなじを
夕風がたわむれる はずむ胸は恥かし
はじめて君を知る 思い出深き夕(ゆう)
 ■心こめて我を見つめる 君のひとみ
 ■愛のささやき 忘れがたき悦こびよ

夕べの うたげで
君を抱きながら踊る ワルツは愉し
かそけき白さを
紅き唇から 君かすかにのぞかす
(しとみ)に似たまつげ 黒くぬれる瞳
 ■心こめてわれは踊る 愛のしらべを
 ■夜の更けるまで 夕べの宴ぞ愉し

きらめく うたげの
灯火はいま消えた われら楡の木の下
もえ立つ唇
紅き血潮も燃えて 我らいま楡のかげ
よろこびは これから二人だけの今宵
 ■心こめて見つめる 君のひとみ
 ■あしたは すべてを貴方にあげましょう



新おけら歌集(10/10/10-12/25)ロシアの詩 / 楽譜:ビーさん(10/12)
■タ宴
 題名は「将校ワルッ」という。すでにこの曲は紹介ずみだが、つぎの様な理由で本書の方ででも別な内容で紹介するこどにした。
「将校ワルツ」という題名はソ連の市民の間ではあまり好まれていない。むしろ一般にはこの変った方の歌詞で歌われているし、曲そのものからいっても「夕宴」という題と、その歌詞にピッタリくるので、私の希望も「将校ワルツ」でなしに歌っていただく方が好ましい。その意味であえて載せることにした。
 夕べのうたげの斎らす情熱的な雰囲気に酔った若い男女の、これは異常に高潮した場面を歌ったものだが、確かにメロディーはそれにふさわしい艶をもっている。
 この曲を私がきいたのは1945年の12月頃で、奏者はペトロフというトランペット吹きである。歌詞も彼が覚えていて書いてくれたが、それを私が理解できたのはずっとのちのことである。
1960/01/28 百瀬三郎【島村喬】