1 |
おごれる心のくもりか
秋の夜は暗く
夜霧の奥に立つ人屋
おぼろなその影
けだるい歩哨の靴音
遠くまた近く
■悲しげにしじまを乱す
■聞け! 聞け!
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4 |
たとえ厚き石の壁も
鉄(まがね)のくさりも
銃剣のきらめく闇に
見張りきびしくも
墓場のごとき静けさも
運命(さだめ)を誇りつ
■生きゆく身をば縛りえず
■聞け! 聞け!
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2 |
囚われ人窓辺により
暗やみを見つめ
両(もろ)の手に格子を掴み
食い入るごとくに
音なき夜更けに
ふくろうの鳴き声するどく
■靴音は時をきざみぬ
■聞け! 聞け!
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5 |
罪なき罪に苦しみて
年月を忘れ
自由に渇えしこの身は
はや疲れはてぬ
我をば守れ 闇深き
おお 秋の夜を
■慰めよ 囚われの身を
■聞け! 聞け!
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3 |
けものか人か
闇に溶け うごめく影あり
はげしく歩哨の声して
銃音(つつおと)とどろく
「わが運命よさらば自由よ」
声なき叫びを
■残して影は倒れ伏す
■聞け! 聞け! |
6 |
再び訪(おとな)う静かさ
かいま見る月は
もの言わぬ涙の顔を
雲間にかくしぬ
けだるい歩哨の靴音
遠くまた近く
■悲しげにしじまを乱す
■聞け! 聞け! |