帰還【Db】

作詞
作曲
訳詞
作者不詳
マクラーソフ
島村 喬


村につづく 高原の小径を いま急ぐ
母の待つ 古き家に………
その母が秘そやかに 哀しみを押さえつつ
われを送りし日を
いまあざやかに 思い出す

霧の濃き 朝だった!
その日残したことば「嘆くのはおやめなさい」
白樺の梢は かすかに鳴りつつ
いま われを迎える
母よ いまは嘆げくな 帰りつつあるわれを
  ■これからは ふたりで共にくらす………


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新おけら歌集(10/10/10-12/25)ロシアの詩 / 楽譜:ビーさん(10/12)
■帰還
 マクラーソフがこれを作曲したのは1939年で、発表は翌年であったときいている。「帰還」という題名にふさわしくないメロディーでもあるし、歌詞である。むしろこれは帰還してきた一兵士が、近づく母の家を前にして出征当時の哀しい別離を想起している、というかたちでもって、一帰還の感動を強く描こうとしているのではないかと思われる。又、当時はドイツと開戦して、ソ連も苦しい敗色の濃い戦いをっづけていた。その時代に「帰還」してくる兵士などは事実あり得なかった。
 従って作詞をしたイワノフはこれに一つの逆説的な意図をもたせようとしたのではないかとみれないでもない。
 1954年の秋、私がこれをハバロフスク市で歌おうとすると、政治部から「帰還」をうたうのは遠慮して貰らいたい、といってきた。そういう曰くつきの歌曲である。
1960/01/28 百瀬三郎【島村喬】