アニタ【Gm】

詞曲
訳詞
ロシア歌曲
島村 喬


可愛いアニタ 優しアニタ
黒い顔した ジプシーの娘
楡の落ち葉の 並木の路で
踊リ狂う アニタ
古いギターの 音ひぴかせて
  ■アニタよ ねぐらはどこにある
  ■星の落ちる 森の木陰
  ■寒い夜が 待つのみ

あすの星を ひとのあすを
黒い瞳で 占うアニタ
さすらいの旅 孤独の娘
自分のさだめは 知らず
ひとを占う ジプシーの娘
  ■アニタよ ねぐらは……ref……


Click first Click again

新おけら歌集(10/10/10-12/25)ロシアの詩 / 楽譜:ビーさん(10/12)
■アニタ
 ヨーロッパ大陸に散在するジプシィーの数がどれくらいか不明だが、彼らはシベリヤは勿論、極東のハバロフスクを中心としてかなり住んでいる。ロシヤ人はジプシィーをツィガンと呼ぷ。コムニズムの体制下でも、彼らは全くの自然児で、いわばコムニズムから一種の治外法権的な取扱いをうけた、しあわせ者だともいえる。
 いまなお街の四っ角に立って手相を占ったり、踊りを踊っそみせたりして、生活しているといっても日本人は信用しないかもしれないが、事実はそうなのだ。アニタはそうしたジプシィーの娘のひとりであって、この曲は彼らの天賦ともいえる音楽的才能がうんだ一つのメロディーを、アニタが私たちのいるペレセルカの窓下にきてよく歌っていたのを採譜したものだ。
 ジプシーの音楽と踊りの素晴らしさは、彼らの占いに比べると遥かにすぐれている。占いは、残念ながらあまり当たらない。それでもコムニズムの国の市民たちは面白半分にジプシィーに手相をみせて、俺の運命はどうなる、などと1ルーブル出して、からかっている。
 ジプシィの方では真面目くさって、「三年後には大病する。奥さんは一カ月後に死にますよ」などと、例の黒い神秘的な瞳を向けていう。「それは大変だ!ハ…」周囲の者たちがどっと笑う。「もう10ルーブルもってきなさい。そうすると、不幸の起きないように、もっと充分占ってあげる」
 真鋳の腕輪やイヤリング、古い赤、黄、責、青、黒のテープ、地を曳き摺る長い汚いスカート、まことにみていると奇妙な満艦飾だが、彼らは金財産を身につけて歩いているのだ。但し風呂には1年に2・3回しか入らない。
1960/01/28 百瀬三郎【島村喬】