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吾妻濱錦石 |
吾妻川の注ぐ所は湾になっていて、周りの風景はもの珍しい。青嶂丹巌は一幅の書で、浜辺は五色の砂石を敷詰めたように光り輝き、錦繍を織るように美しい。
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2 |
猿神鼻夕照 |
奇岩怪石を東側に配し、岩の上の古松は翠の影を波間に漂わす。一本の道が岩を穿って、三個の洞門を作り、夕陽の沈む時、この岩と松と波は絶佳の光彩をはなつ。
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3 |
無為館松風 |
昔の町奉行所(無為館)の跡地で、古松が鬱蒼と茂り往時を思い起こす。朝の嵐がこの松に往古の跡を尋ねれば、稷々たる琴の音が風雪を経た歴史を物語ってくれる。
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4 |
崩濱岩清水 |
断崖が切り立ち、岩の屏風のようになり、崖の下にお地蔵様が奉られている。その脇に高い所から清水が湧いている。
昔この辺りは辺鄙で、激浪が打ち寄せる所にある事が奇観であったが、この頃、人家が建って、美観を損なうようになった。
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5 |
櫻澤_春曙 |
神明宮の周りの山は桜の樹で被い埋め尽くされている。春暁の折、桜の花は雲のごとく霞に似て、神明宮の祠は白雲の中に埋もれているようである。風光明媚さは千金に値する。
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6 |
磯崎川納涼 |
盛夏の一夜、橋の上で涼をとれば、月影が海に懸かかり、川の水音が涼し気でなかなか趣がある。
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7 |
観音堂霊木 |
円覚寺境内に巨杉あり。周囲三丈に清楚たる竹林があり、その周りの樹木と交じり合って、老杉が千古の歴史を語ってくれるようである。伝説によれば、坂上田村麻呂がお手植えの杉という。
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8 |
岡崎山暮雪 |
一名、鉢盛山と称し小高い所である。晩冬暮雪の風景には趣がある。
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9 |
入前崎帰帆 |
臥牛に似た岬、夕陽を乗せて帰る帆影が美しい。一望千里、雄大なる岬からの眺めは素晴らしく、一幅の書に値する。
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10 |
平島_白鴎 |
深浦港の左側に平島がある。春、波が静かで霞がたなびく時や、島に集まっているカモメが春眠を破られていっせいに飛び立つ様は、一奇観である。
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11 |
笠形山秋月 |
この山は深浦の中央部にあり、山の上に一本の松樹ある。秋の夜、松風に雲を掃かせた、清光水のごとき月が松樹に懸る時、風光絶佳で誰でも詩趣を禁じえない。
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12 |
宝泉寺晩鐘 |
猿神鼻の丘の上、松樹が鬱蒼なる所に宝泉寺がある。一杵の鐘の声が晩霞を破って響く時、無明長夜の夢は覚めて、自分が禅門に在るかのような気にさせられる。
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