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むかし一つの 愛犬を
かひたる人の ありけるが
ある夜もこれを ひきつれて
■二人いで行く 闇の道
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4 |
あと追いかけて 死したりと
思ひし犬は 歸りしが
見れば主人の 落としける
■財布を くわへたり
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2 |
いかがはしけん たちまちに
犬は主人に 吠えくるひ
噛み附くべき さまなれば
■打でど叱れど 止まばこそ
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5 |
さては このこと 知らさんと
うたるるまでも 吠えけるか
吠えて 撃たれて 倒れても
■主人の恩を 忘れずに
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3 |
はては 主人も 狂犬と
思いさだめて 無惨にも
ピストルはなちて 撃ち倒し
■やうやく 家にかえり來ぬ |
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